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除名              黒田喜夫


一枚の紙片がやってきて除名するという
何からおれの名を除くというのか
これほど不所有のおれの
ひたひたと頰を叩かれておれは麻酔から醒めた
窓のしたを過ぎたデモより
点滴静注のしずくにリズムをきいた
殺された少女の屍体は遠く小さくなり
怒りはたえだえによみがえるが
おれは怒りを拒否した 拒否したのだ日常の生を
おれに残されたのは死を記録すること
医師や白衣の女を憎むこと
口のとがったガラスの容器でおれに水を呑ませるものから
孤独になること しかし
期外収縮の心臓に耳をかたむけ
酸素ボンベを抱いて過去のアジ句に涙することではない
みずからの死をみつめられない目が
どうして巨きな滅亡を見られるものか
ひとおつふたあつと医師はさけんだが
無を数えることはできない だから
おれの声はやんでいった
ひたひたと頰を叩かれておれは麻酔から醒めた
別な生へ
パイナップルの罐詰をもって慰めにきた友よ
からまる輸血管や鼻翼呼吸におどろくな
おどろいているのはおれだ
おれにはきみが幽霊のように見える
きみの背後の世界は幽晴の国のようだ
同志は倒れぬとうたって慰めるな
おれはきみたちから孤独になるが
階級の底はふかく死者の民衆は数えきれない
一歩ふみこんで偽の連帯を断ちきれば
はじめておれの目に死と革命の映像が襲いかかってくる
その瞬時にいうことができる
みずからの死をみつめる目をもたない者らが
革命の組織に死をもたらす と
これは訣別であり始まりなのだ
生への
すると一枚の紙片がやってきて除名するという
何からおれの名を除くというのか
革命から? 生から?
おれはすでに名前で連帯しているのではない

(1961年・代々木病院で)






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コメント

  1. かもめ | -

    この詩に圧倒されました。のらりくらりと生きているわが身が恥ずかしくなります。死の淵を体験し、覚悟を決めたその意思の前では、陳腐な生き方をしている人間が実にくだらないことでしょうね。身が引き締まります!

    ( 06:44 )

  2. ざざ改め電気羊 | -

    >かもめさんへ♪

    日本共産党の党員として山岳工作隊に入り活動した黒田喜夫さんの詩です。
    肺病で入院した彼のもとへ届いた「除名」宣告。
    このところよく、この詩を思い出しています。
    なので、全文をのせてみました。


    最近は、志位さんが参院選に向けての共闘をSEALDsとともに呼びかけたりしていますが、私は、以前より冷静にそれを見ています。
    ああ。共産党!
    本当に、本気で(本気と書いてマジ!)戦争法案を止める気があるのか。
    それとも、またポーズだけなのか?
    自民も民主も共産も、ひと皮むけば同じなのではないか、と。


    日本でゼネストが起きなかったのは、大多数の人がそこまでの危機感をもっていなかったということなのでしょう。
    たぶん、命まで取られるとは思っていないんです。
    周りの人が少しづつ死に始めた段階で、ようやく気づくのでしょう。


    生と死の狭間で、ここまでの覚悟をもって、生き方としての革命を証明した黒田さんの詩は、心にずしんと響きます。
    黒田さんが生きた厳しい時代に比べると、私たちの生きている時代は……。


    でも、うかうかしているうちに、奈落の底へ突き落とされるような気がして、ざわざわと落ち着かなくなるのです。


    私も身を引き締めていきます。
    コメント、ありがとうございました^^

    ( 21:29 )

  3. |

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    このコメントは管理人のみ閲覧できます

    ( 13:13 )

  4. ざざ改め電気羊 | -

    Re: >鍵コメさんへ♪

    そうですね。
    被曝のこと、移住のことを言い出さない人は、信用できませんね。
    結局同じ穴のムジナなのではないかと。

    今までは、本多勝一さんの言うように「消去法で選ぶ」と共産党しかないのかなと思っていましたが(それほど日本には魅力的な政党がないのです)はたして本当にそれでいいのかと。
    局面に立った時に、本音が透けて見えますよね。
    だから、山本太郎さんはすごいです。ずば抜けてますよね。
    彼があと10人は欲しい。。。

    政治の話は、恥ずかしながら友達とはしません。
    話しても、私が一方的に話すだけなんですもの。

    同じ感覚の人とはそういう話はします。でも、どこまで話していいものか、探りながらですけどね(苦笑)。

    一番話せるのは夫かな。
    夫にはなんでも思ったことをベラベラ話します。
    でも彼は今自分の次のPTA会長の候補者探しでいっぱいいっぱいで、政治どころではないというか。

    そんな感じで、みんな自分の生活や身の回りのことで精一杯で、政治活動などしてられないという人がほとんどなのかな、とも思うのです。今後どんどん消費税が上がり、医療費やその他の出費も多くなって収入は下がるのみですから、夢も希望も持てない世の中になっていくのですかね。そうやって人々を無気力にさせてしぼりとるのが、あの人たちの狙いでしょうが。

    そんな中で私は、あまり親しくない人と談笑しててもちょっとフクシマのことを織り交ぜたり、「無関心ではないんだぞ」というのを匂わせたりはしています。それを相手にプレッシャーとして与える感じ。

    鍵コメさんのコメントを読んで、私もしっかりしなきゃ!と思いました。
    上手くまとまりませんけれど、私も地道に仲間を増やしていきたいと思っています。
    でも極度のコミュ障だからなぁ。(それが大問題)

    ( 09:22 )

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