「Ⅰ」に続いてのベストエッセイⅡ。
これまた時を経てもまったく色褪せない秀逸なエッセイばかり。
忙しい時には読まない方がいいです。危険ですから。



米原万里ベストエッセイ (2) (角川文庫)



p.128 国家機密の隠し方


2004年に起きたイラク日本人人質事件を覚えておいででしょうか。
あの年は、イラクで日本人が誘拐され拘束されるという事件がいくつかありました。
中でも、3名が誘拐され、自衛隊の撤退などを求められた後、イラク・イスラム聖職者協会の仲介などにより解放された事件を…。


あの当時マスコミは、イラクの武装勢力ではなく、人質となった被害者へ執拗なバッシングをしました。
そう、流行語にもなった「自己責任」です。


イラクに行ったお前らが悪い
国に迷惑をかけた
自分で行ったのだから 自己責任だ


テレビも新聞も そういう論調で 人質を責め立てる報道をしていました。
情報がヒステリー化する中で、私たち万犬もそれに倣い、「ジコセキニン!ジコセキニン!」と吠えたてました。


当時、私はあまりよくその事件のことを考えませんでした。
人質が何の目的でイラクに行ったのか、知ることもせず決めつけていました。
のちに国際社会から非難されるほど、日本のマスコミが人質を攻撃したのはなぜだったのか。
それが、これを読んで初めて理解できました。
そうだったのか…。



11.gif




最初に虚に吠えた一犬は、小泉元首相でした。


人質解放に決定的役割を果たしたのは
日本政府ではなく、イラク・イスラム聖職者協会のクバイシ師でした。
クバイシ師は言ったのです。


「われわれの方が日本政府よりも人質のことを考えていたみたいですね。日本政府からは何の接触もありませんでした。そうそう、解放が遅れた理由の一つに、小泉首相が犯行グループをテロリスト呼ばわりしたことがあります。われわれが解放に全力を尽くしたのは、日本政府のためではなく、政府の自衛隊派兵に反対している日本国民のためです」(p.130)


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日本政府の面子、丸つぶれ。


しかも、犯行グループによる人質を解放した理由も、これまた日本政府の無能さを露呈することになってしまいました。その理由とは…

  ↓   ↓   ↓

 
①日本政府が拘束された三人の命よりも戦争犯罪者ブッシュに仕えることを優先させているので、われわれが日本政府に代わって人質の命を助ける
②イラクの抵抗運動は平和な文民の外国人を狙ったものではない
③マスメディアを通じて呼びかけを行ったイラク・イスラム聖職者協会の原則に従う
④自衛隊派兵に対する日本人がデモをしていたので、日本政府と日本国民を区別することにした
⑤人質の日本人三人は、イラクの人々を助けており、占領国への従属に汚染されていないことを確認したから




この事件に関しては、日本政府は何もしなかった。


人質にされた原因は 日本政府にあり
解放された原因は 人質たち自身にあった。



面子を完全につぶされたことに対して、小泉元首相は逆上したのだと。
クバイシ師の発言に反論できないから、人質たちに八つ当たりしたのだ、と。


‥‥‥やだ、カッコ悪い。
そして‥…‥なんか、似てる。



後藤健二さんの時の対応とソックリではないですか。
人質を責めたてたマスメディアの論調も、当時とまったく同じじゃなかったですか。



最後に、米原万里さんの珠玉の言葉を。



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…最大最高の国家機密は、日本政府は何もできなかったし、何もしなかった、ということ。選挙を目前に控えたこの時期、必死で「自己責任」なる詭弁を弄して人質たたきをやっているのは、この恥ずべき事実が暴かれるのを恐れてのことに他なるまい。(p.133)
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