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なぜ母親は娘を手にかけたのか ―居住貧困と銚子市母子心中事件



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2014年9月24日、千葉県銚子市内の県営住宅で、家賃滞納のため強制退去となったその日、母親(43歳)が無理心中を決意し、中学2年生の娘(13歳)を殺害した。健康保険料も滞納するほどの生活苦で、母親は「家を失ったら生きていけない」と思い詰めた果ての事件であった。行政に相談したが、結果的に生活保護を受けられなかった、という。母親の事件当日の所持金は2717円で、母親と娘名義の預金口座の残高は合計で1963円だった。(p.2)
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ここ数年でもっとも忘れられない事件です。


格差が拡大し、貧困が深刻化する日本で起こった悲劇。
この事件を知ったとき、ああ、ついに……と思いました。


親子が発見されたとき、母親は、娘の運動会のビデオ映像を見ながら、死んだ娘の頭をなでていた、という報道を今でも覚えています。
娘を学校に送ってから自分一人で死ぬつもりだったが、娘が自分を心配してその日は学校を休むと言ったので計画が狂った、なんで娘を殺すことになったのか分からない…。
母親は、そう言っていたそうです。



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助けてあげたかった
手を差し伸べたかった
自分が近くにいて、母娘のSOSに気づいてやれたら…。


同じくらいの歳の娘を持つ親として
この事件は 本当につらかった。


どうしてその子は死ななきゃならなかったのか。
生活苦にあえいでいた母娘を 県営住宅から追い出そうとしたのは誰か。
この母娘の逼迫した状況を 本当に誰も知らなかったのか。
救える人は いたのではないか。
地域で生活し、学校にも行き、役所にも相談していた。
それなのに、なぜ……?


この事件は、単なる心中事件ではない。
日本の住宅政策、社会保障、社会福祉政策の貧困さ、そして、人権の剥奪という重大な問題を浮き上がらせた事件でした。



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千葉県の家賃減免措置がきちんととられていれば…
明け渡し請求、強制執行前に、県が母親と面会し事情聴取をしていれば…
保険年金課と社会福祉課とのあいだで、情報交換が行われていれば…
生活保護申請窓口の担当者が きちんと母親の生活状況の聞き取りをしていれば…
国の公営住宅に対する方針が 低所得者への配慮に即したものだったら…


あの子は死なずにすんだ。


こういう事件が起きるたび、思います。
市の責任、県の責任、国の責任である、と、それは明確なんだけど、
被害者はいつだって顔の見えない相手と 不毛な戦いを強いられる。


制度や法律を整えるのが急務なのは当然。
でも、それを実際に行っているのは「人間」なんです。


窓口の人が、助けを求めに来た人に対して、最初から色メガネで判断するのではなく
この人は本当に困ってここに来ているのだ、と。
そういう優しさを持って対応していれば、この母親は救われたのではないかと。


私が甘いのだろうか。
でも、法律なんてたいていザルでしょう?
どんなに冷酷な人間にも、事細かく指定されたルールに従って業務を行わせるようにするよりも(その制度が整うのを待つよりも)、窓口にいるその人に ほんのひとかけらの人間らしい優しさとモラルがあれば、役所の本来の機能は十分発揮されるのではないかと。


夫が多額の借金をした、離婚してシングル家庭だった、持病で働けない、パートの稼ぎが不十分だった、、。
人にはさまざまな事情があります。
でもそれは、彼らの生きる権利、住み続ける権利を奪う理由にはなりませんから。



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政治家や公務員になる人は、世の中にはこういう母娘のような最底辺の暮らしを日々続けている人たちがいることに いつも思いを馳せていて欲しいのです。


清水玲子さんの「秘密」5巻より薪さんの言葉を。


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「あなたは決定的に想像力に欠けている
どう頑張っても自分をとりまく倖せな人生しか想像出来ない

自分とはかけ離れた不幸な人達 
毎日死んだ方がましだと思いながらそれでも生き続けなければならない人達の苦痛に満ちた犠牲をーー
この社会の底辺に存在する暗闇を
想像しようとしない
見ようとすらしない

いくら経験を積んでも変わらない
それは 監察医として致命的な欠点だ」




最後の「監察医」の部分を「政治家」に変えて 総理に捧げます。




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今日衆院で TPP承認案を与党が強行採決しましたね。
国民皆保険の崩壊の始まりです。
「貧乏人は病院にかかるな」
盲腸の手術で700万請求される国になることでしょう。


貧しい人たちのことを想像すらできない人。
死んでもいいと思ってる人。
むしろ死んで欲しいと思っている人。


そういう人たちが霞が関を牛耳っています。


この事件は、ほんの始まり、なのかもしれません。


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