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「ミスター・ネルソン」
女の子はまばたきもせず、わたしをまっすぐに見つめると、たずねました。それは、わたしにとって運命的な質問でした。
「あなたは、人を殺しましたか?」
だれかにおなかをなぐられたような感じがしました。      (p.22)
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小学4年生の生徒たちの前で、ベトナムでの戦争体験を語ってくれと頼まれたアフリカ系アメリカ人のアレン・ネルソンさんは、お話のあと、質問はあるかとの問いに手を挙げたある女の子に、運命的な質問をされました。
そして、葛藤のあと、目を閉じたまま「YES」と答えます。
女の子は小さな手をネルソンさんの腰に回して、やさしくだきしめようとしました。
「かわいそうなミスター・ネルソン」
女の子の目には涙がいっぱいたまっています。ネルソンさんは泣き崩れました。
PTSDに苦しんでいた彼は、この瞬間から生まれ変わります。



ほとんどの漢字にルビがふってあり、小学生なら十分読める。「シリーズ・子どもたちの未来のために」という講談社の発行している本の一つです。子ども向けと言っても、大人にこそぜひ読んで欲しい、そんな本。


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ニューヨーク生まれのネルソンさんは、貧しさと暴力に満ちたゲットーで、少年時代を過ごしました。
彼の生い立ちを聞くと、海兵隊に入らない選択肢などなかったのではないかと思えます。それほどすさんだ生活でした。


そしてべトナムへ赴き、初めての戦闘に巻き込まれます。
戦場では、考えたり感じたりしてはいけない。どんなことが起ころうとも、恐怖をコントロールしてタフにならなければならない。
ベトナム人に愛着を感じることのないようにしろ。奴らはグーグス(gooks:ベトナム人の蔑称)であって人間ではないのだ。


殺したベトナム人の死体の耳を切り取って持ち歩く。
アンブッシュという待ち伏せ作戦、村落を焼き払うサーチ・アンド・デストロイ作戦。
女も子どもも老人も皆殺しです。農民であろうとベトコンであろうとお構いなしに。
無慈悲に、なんの感情もなく村に火を放ち、殺し続けたのです。


そんな日々を送っていたネルソンさんの心を変えたのは、あるベトナム人の青年の言葉でした。
青年は頭を撃ち抜かれる前に、片言の英語でこう言ったのです。


「なぜ、あなたたちはわたしの国にいて、わたしたちを殺しているのですか?わたしたちは自由のために戦っています。あなたたち黒人も自分の国では自由すらないではありませんか」

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そしてさらに、決定的な出来事に遭遇します。

ある村の裏庭の防空壕で、若いベトナム人の母親のなんと、出産を目撃してしまったのです。

「出産に立ち会った」というのは衝撃的すぎますが、人種の壁を越えるとか、妙な洗脳から解き放たれるキッカケなんて、意外と些細な出来事だったりしますよね。

私も初めてブラックアフリカの地を踏んだ時、あまりの文化の違いや黒人の態度に情けないやら腹立たしいやらで、今一歩踏み込めずにいたのですが、あることがキッカケで一瞬にしてアフリカ人が好きになってしまったのです。
このことはここにも書きました。→『On Third World Legs〜第三世界の脚で立つ〜』
ホコリ避けにこれを鼻の穴につめろと綿を渡された話ですがね(苦笑)。


ベトナム人も自分たちと同じ人間だ、グークスなんかじゃない。
そう気づいたのです。正常な感覚を取り戻したのですね。


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この本には、当時まだアメリカの占領下にあった沖縄についても書かれています。(p.49〜)
この項を読むと、日本人である私はとても胸が痛くなります。
タクシーの料金を踏み倒すのは日常茶飯事で、女性と遊んでお金を要求されても払いたくなければ払わず、容赦なく殴りつけたりしたこと。沖縄の人たちを「ジャップ」と呼び、人間として見ていなかったこと。
そして、どんな悪行の限りをつくしても、基地のゲートをくぐってしまえばアメリカ兵は安全であり、沖縄の警察の手が及ぶことはなかったこと…。


1995年。
ネルソンさんは、沖縄で12歳の少女が米兵3人に集団レイプされたという事件をニュースで知ります。
そして、ベトナム戦争が終わって20年も経つのに沖縄にまだ基地があり、アメリカ兵がまだ居るという事実に驚いたと言います。
私にはその事のほうがショックでした。
ああ、普通のアメリカ人にとっては、その程度の認識なんだ沖縄って…と。
現在でも、ベトナム戦争当時と同じような悲惨な事件が続いていることを、アメリカの人たちは知っているのでしょうか。
「なぜあなたたちは私の国にいて、犯罪や暴行をくり返しているのですか?」
と言ってやりたいです。




書きかけ





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