まず、著者の考える医療の鉄則をば。

一、死にゆく自然の過程を邪魔しない
一、死にゆく人間に無用の苦痛を与えてはならない

今の日本の医療現場で、この2つの鉄則が守られているところなどあるのだろうか。


2011年の日本老年医学会でのアンケートの結果が 如実に日本の医療の現実を物語っている。
「食べられなくなった末期の85歳のアルツハイマーの患者に対してどうするか」の問いに、何もしないのはわずか10%、胃瘻(お腹に穴をあけてそこから栄養等を補給する)が21%、鼻チューブ栄養13%、手や足からの点滴注射が51%…と半数以上を占めている。
さらに、この手や足からの点滴注射が「患者にとって医学的に必要」と考えている医者は約4割だったという。


食べないから死ぬのではなく、「死ぬ時」だから食べないのだ


私の父親は、76歳でもともと肝臓が悪く、今はゆっくりと最後の時を過ごしている。
何日か前、母は元気な時と同じように、無理やり食事を父の口に詰め込んで、父はその後全部それを嘔吐し、そのせいで誤嚥しかけたらしい。
介護している側にとっては、どうも食事介助くらいしか自分にできることはないと思ってしまうようだ。確かに気持ちは分からんでもない。
が、本人が食べないのなら無理に食べさせなくていいのだ。調理は工夫して目の前に置くが、手を出さなければそのまま下げてしまうという北欧式で十分。
「看取る」の真髄は、出来るだけ何もしないで「見とる」ことにある。
それを母に言ったら、ようやく理解してくれたみたいで、今は本人が欲しいと言えばあげるが基本は食べさせていないらしい。それでいいです、お母さん。



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あとちょっと心に残った箇所をいくつか。



リハビリテーションは、人間が人間にとってふさわしくない状態に置かれた時、再びそれにふさわしい状態に戻すことを指し、必ずしも、病前の姿への復帰を意味するわけではない。

リハビリを徹底的にやれば元の状態に戻れると勘違いしている人がすごく多い。
頑張れば良くなる→良くならないのは努力が足りないせい→ガンバレ!もっとガンバレ!→貴重な残りの時間が「訓練人生」となる
…お気の毒としか言いようがない。


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残存機能や潜在機能をフル活用し。補助具や車イスを使ったり、手すりをつけたり、段差をなくしたりして、病前の姿にこだわらず、病気や障害によって失われた生活を、もう一度立て直すこと…(p.30)
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現実をありのまま受け入れる。
起こってしまったことは仕方がないのだから、思考を切り替えて次に進むべきだ。
リハビリだけに期待して目標を「元の患者の姿限定」にしている家族は、面倒くさいことから目を背け、責任逃避をしているに過ぎない。



救急車に乗ることは、延命処置も含めて現在の医療でできることは何でもして欲しいという無言の意思表示


一度病院に運び込まれたら、もうされるがまま。本人の意志に関係なく、あらゆる処置が施される。
たいていの人は「延命処置はしてほしくない」と考えている。が、それを叶えてあげるためには、事前にしておくことがいくつかある。


今回私も、父の延命処置は一切しないという書類に母と連名でサインした。
延命処置とは、具体的に、心臓マッサージや気管内挿管、人工呼吸器など(と書かれてあった)。
点滴による水分の補給や抗生剤、輸血等はおそらく入っていない。それはその都度確認されると思うが、その程度の治療については、こちらが積極的な意思表示をしない限り、病院側の判断に委ねられるのだろう。


こういうことは出来れば本人が元気なうちに「事前確認書」をしたためておくべきだ。
この「事前確認書」については、p.160あたりに詳しく書かれてある。
どこまでの医療を受けたいのか、受けたくないのか。ボケたり意識がなくなってからでは遅い。だからといって病院任せにすれば、どんなことになるか分からない。
自分の最期くらい、自分で決めるべきだと思う。いくら人任せが好きな国民性といってもね。



その他にも、抗がん剤やワクチンのこと、がん検診などについて書かれてある。
ひと言で言えば、年取ってあちこち具合が悪くなるのは当たり前、何かと言うとすぐ病院にかかるのはやめれ、ということだろう。


老人医療費は現在1割となっているが、80歳を過ぎたら1割と言わず、3割負担にしてもいいのではないかと個人的には思っている。だって寿命だもの。お迎えが近い高齢者に必要ない治療が行われて、それをすべて税金でまかなっているのだよ。その税金を払っているのは誰か。自分が病気になった時には、高負担を強いられる人たちですよ。


今は90歳を過ぎても平気で手術をするらしいが、私がもし90歳になってがんが見つかっても絶対何もしないようにしよう。というか、80過ぎてがんになったら、がんに感謝すべきだろうね。私は80過ぎたらジタバタしない。潔く寿命を受け入れたい。
そういうふうに事前確認書を作っておいて、ムスメにも言っておかなければ。自分の頭の正常なうちに。







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